音階と音程 その歴史と謎
(レッスンの友社「ストリング」2003年9月-2006年3月号連載)
レッスンの友社の弦楽専門誌「ストリング」で2003年9月から2006年3月まで計31回にわたり連載し、大きな反響のあった「音階と音程、その歴史と謎」、今なお関連する問い合わせも多いため、この連載の内容の一部を加筆修正してWEBで随時公開してきます。なお現在、書籍化も検討中です。
1 弦楽器奏者のトラウマ――音程(1)
●はじめに
この連載を始めるきっかけとなったのは、今年(2003年)の『ストリング』誌4月号の巻頭インタビュー「音律の向こうに見えるもの」です。そこで私はかなりアグレッシブに、挑発的なもの言いをしたのですが、編集部に反応をきくと、ほとんど反論がなく、やや拍子抜けの感だったとのことでした。しかし、ヴァイオリン・ウェブの掲示板では過去にも激しい音律論争があったようで、私も多少心配しつつ書き込んだりしたのですが、なぜか、私への疑問反論は少なく、なんだか煙たがられているのかなあという感を持ちました。しかし、その後の他の人の書き込み等やアクセス数のすごさを目にして、みなさん「音律論」は避けて通れないという自覚はかなりあるような気がしています。ただし、「音律」という言葉を使うと、何となく現実の練習や演奏とはかけ離れた抽象論と思われるらしい。それもそのはず、「音律」に関するホームページはかなりあるけれど、みんな数字を列挙してそれらしく理論武装している風で、とかく数字には弱そうなヴァイオリン族は、なんだかなあと敬遠してしまうようです。かくいう私も「純正律音楽研究会」を主宰しているのですが、ヴァイオリン奏きでもあるので、「音律」論を展開するのではなく、いかにして「音程」の問題に肉迫できるのかという姿勢でのぞみたいと思います。
ヴィオラ、チェロの方にお願いですが、一応5度調弦の仲間なので、私はヴァイオリンを基に話を進めます。また、コントラバスはもとヴィオール族ともいわれていますが、やはりフレットが無く、自分で音程を作る楽器なので同じ悩みはあろうかと思います。ヴァイオリンとは違い四度調弦ですが、基本的には同じと見て論を進めます。コントラバスならではの時には、その時々に細かい説明を加えます。
さて、弦楽器、ヴァイオリン族にとってのトラウマは「音程」です。私がヴァイオリンを始めたのは小学校4年生ですが、芸大の同級生たちはみんな3つ位からヴァイオリンを始めています。しかし、ピアノやエレクトーンと違い、ヴァイオリンは自分で音程を作らねばならない。これは子供にとって非常に酷なことです。ピアノ等では音程が悪いなどと怒られることは絶対にないのに、ヴァイオリンの子はいつも先生から「音程! 音程!」と叱られます。それも明確な分り易い説明があるならまだしも、とにかく「少し高い! それは低い!」とか、言われるだけですから、音程に恐怖感を持つのは当然です。だからプロになっても、自分の音程に自信が持てず、自信のない者同士が空しい音程論争をしては疲れはてています。私は何とかして、このトラウマから解放される為に、なんらかの役に立ちたいと思い、この連載を始めました。なるべく多くの皆様とのディスカッションも望んでいます。
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