Column/リスニングコラム

 

リスニングコラム/GENTLE GIANT『in concert』『Out of the woods』


GENTLE GIANT『in concert』
(WN CD066)
GENTLE GIANT『Out of the woods』〈the BBC sessions〉
(BOJCD018)

黒木:今回は僕の担当なのでロックでいきます。

玉木:僕もロックは、実は大好きだし、日本で初めてロックヴァイオリンをやってるんだよね。

黒木:そうでしたね。じゃ、ジェントル・ジャイアントというバンドを御存知ですか。彼らはイエス、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、E.L.P.などといったバンドと同時期に活躍した、いわゆるプログレなんですけど。

玉木:うーん、今出た名前は全部知ってるし、よく聴いたけど、ジェントル・ジャイアントはどうも網の外のようだったね。

黒木:そこで今回は、このジェントル・ジャイアントをお薦めしたいわけです。特徴といえば、とにかくテクニックがすごかった。それも個人のプレイヤーとしてのテクニックではなく、バンドのアンサンブルとしてのテクニックが尋常じゃない。しかも1人が複数の楽器をこなし、ヴァイオリン、チェロ、ヴィブラフォン、リコーダー、サックス、トランペットまで操ってる。ギター、ベース、キーボード、ドラムなどはメンバー5人全員がほぼ同じレヴェルで演奏でき、ライヴでは全員によるギター、リコーダーやパーカッションアンサンブルを披露していました。何よりも圧巻なのがヴォーカルアンサンブルで、5人がアカペラでばっちりハモっちゃう。はっきり言って、さっきのバンド群の中では問題にならないくらい飛び抜けて上手かった。ただし日本ではほとんど売れなくて、一部のファンにもてはやされるくらいですが……現在では音楽活動をしていないようです。まずは早速、彼ら「ON REFLECTION」という曲を聴いてみましょう。――〈CDをかける〉――これは彼らの馬鹿テクぶりを凝縮したような曲で、スタジオ録音よりもこのライヴヴァージョンの方が面白いですね。と言うか、ライヴで、つまり編集をしないでここまでやれるというのは驚異的。まずリコーダー、チェロ、ヴァイオリン、ヴィブラフォンなどのアンサンブルで始まって、ばっちりハモってるヴォーカルアンサンブル、そして最後に、エレキ楽器によるロックアンサンブルで終わる、と。

玉木:う〜ん、うますぎる、器用すぎる、自分達だけが楽しんでる、という印象だねぇ。

黒木:じゃ、今度は同じ曲をBBCのスタジオライヴのヴァージョンで聴いてみましょう――〈今度はスタジオライヴ版をかける〉――最後のロックアンサンブルのところ、ギターとキーボードのパートがひっくり返っているでしょ。基本的に彼らは曲を対位法で作っているので、こういう遊びができるんです。これは編曲を担当していたキーボードのケリー・ミネアの功績なんですけどね。彼はロイヤル・アカデミー音楽院で作曲の学位を取得しているんです。それが何を血迷ったかこんなロックバンドに手を染めてしまったんですね。

玉木:なるほど。

黒木:なぜ彼らがいまいち売れなかったかというと、彼らはどうも音楽的にすごいことをやりさえすれば良いと考えていたらしくて、こういう安直な発想をしちゃったところにあると思うんです。音楽の世界ってのは色々な面でのファッション性が求められると思うんですけど、彼らはそれを無視して音楽だけに走っちゃった。

玉木:僕自身も若い時にそういう考えで失敗を繰り返してるんで、少々耳が痛い。

黒木:でも逆にそういう純粋さみたいものが曲がりなりにもジェントル・ジャイアントというバンドで結実したことがあるという事実、それはそれですごいと思うんです。




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