リスニングコラム/『SALTERIO』 BEGONA
OLAVIDE,
『THE SPLENDOUR OF AL-ANDALUS』 CALAMUS
『SALTERIO』 BEGONA OLAVIDE
(M025A)
『THE SPLENDOUR OF AL-ANDALUS』 CALAMUS
(M026A)
今回はスペインの伝統音楽を紹介します。というと、フラメンコを思い浮かべる方が多いとは思いますが、今回扱うのはさらに古いのものです。カルロス・パニアグアという人が、失われてしまっていた中世の古楽器を、図版などいろいろな資料を当たることによって、独自に復元し、文字通り手探りで弾き方を修得しつつ演奏活動を行っているのです。この2枚のCDは彼を中心としてベゴニア兄弟など彼の仲間の演奏をスペインの教会でタッド・ガーフィンクルが録音し、そのタッドさんが日本で設立したM・Aレコーディングスというレーベルから発売されています。僕が紹介するCDは、実は、タッドさんが買い付けて日本に持ち込んだのを購入したものが多い、ということは気付いておられる読者の方も少なくないのではと思います。
中世のスペインといえば、そして特に彼等の住むアンダルシアとは、まさにキリスト教文化とイスラーム教文化が交錯した地域であり、それがゆえの豊かな文化遺産に溢れるところです。自然科学史の領域では、古代ギリシア・ローマの学芸は中世においてイスラーム教徒に受け継がれ、12世紀くらいから主にイベリア半島などからヨーロッパに流入してきた、と説明されることを確認しておきましょう。もちろん音楽もそうやって継承された重要な学芸の一つでした。ところが中世のイスラーム教徒がどのような役割を果たしたについては、未だもって十分に研究が進んでいるとは言えないのです。キリスト教のイスラーム教への蔑視という問題もさることながら、音楽に関してはなにぶんにもレコードなどない時代ですから、当時実際にどのような音楽が演奏されていたかについては確かめようがないのです。そういった中で、たとえ想像の域を出ないのだとしても、このCDのような試みは貴重だと思います。
『SALTERIO』のほうは弦楽器の響きが本当に美しいです。ヨーロッパに住んでいて感じるのはとにかく教会が日常生活の本当に身近なところにあるということです。それぞれの教会は基本的に抜群の音響効果を誇っており、ということはそれらがあっという間に上質のコンサート会場に早変わりしてしまのですから、うらやましい次第です。なおSALTERIOというのは琴のような弦楽器の総称です。
『THE SPLENDOUR OF AL-ANDALUS』は、歌と笛の旋律を表に出した曲が多いです。個人的な感想としては、笛の音が何となく日本のお囃子を思わせるし、中学生の頃愛聴していた中国の伝統音楽の調べに似ているような気がします。そんなことをタッドさんに話したら、笑われてしまいました。もちろん、これらのCDを買った当時、水滸伝を読み直していたからかも知れません。ただし、笛の調べは明らかに平均律ではなく、ピュタゴラースだとすれば、僕が日本や中国の音楽と近いものを感じてしまうのも強ち間違いではないように思っています。
(黒木)
※M・AレコーディングスのHPは:
http://www.marecordings.com/
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